新しいもの、を入手したときには特有のわくわく感があります。それは本、そして雑誌にももちろん当てはまり、「新創刊」で「最新号」だったりすると、さらにその気持ちは高まるわけで。
と、「新創刊」で「最新号」な文芸誌、「MONKEY」の1号を読んでみたところ、ワクワクはだんだんと懐かしさへと変化。なにしろ、20年程前によく読んだ作家、ポール・オースターの青春が特集だったので無理もありません。
さらには、今だからこそ心に響くのかも、な部分もちらほら。
病院はオースター作品の主要な要素ではない。が、二〇一〇年刊、小説としてはいまのところ最新作である『サンセット・パーク』には、「世界一小さな病院」が出てくる。小説の中の病院ですが、こういうとこあったら、行ってみたいなあ。昔はきっと、何かを売るお店はその修理も担当していたんだろうけど、最近はどんどんそういうとこ、少なくなってきてるわけで。そして修理するより、新製品を買うのが簡単だしお金がかからない、ってことが多々。たぶん、その流れを象徴するのは携帯電話やコンピューター。
といってもこれは、人間の病を治す病院でなければ、動物病院でもない。その名も「壊れた物たちの病院」(the Hospital for Broken Things)。すべてがデジタル化されていくなかで忘れられ捨てられていくアナログな物たちを修理する病院である。(p.106;柴田元幸 ポール・オースター A to Z)
この病院の「院長」ビング・ネイサンに言わせれば、ベトナム戦争以降、「アメリカ」という理想はもうほとんど無効になったにもかかわらず、ひとつだけまだ、ほぼ全国民がしがみついている理念がある。それは「進歩」(progress)の理念である。ビングはこの理念に真っ向から反対する。負け戦だとはわかっている。でも、それを前提として受け容れた上で、携帯電話を避け、コンピューターを避け、週末はジャズバンドでドラムスを叩き、平日は病院を営む。(p.106)わたしもささやかながら、戦っています。自分で修理できるものは修理し、修理にだして直してもらえるものは直してもらってできるだけ長く使う。
時間やお金に換算すると完全に負け戦なのですが、心の充足度はなかなかのものです。あとデジタルというかコンピューターについてはもともと好きだからどうしようもなく、進歩とやらになんとなくついていくのかも。でも個人的にはスマートフォン、もしかしたら要らないかも。
Sunset Park Paul Auster
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